比較的体力のない人で、冷えや湿気による腹痛、腰痛、足の痛み、下半身が冷えているのに上半身はのぼせ、頭痛、発熱、肩こり、水おちにつかえがある人に用います。腰痛、神経痛、関節痛、冷え性、胃腸炎、婦人科系機能障害に応用します。胃腸が弱い、湿気が多いときに腰・下腹部・足などの痛みがおこる、下半身が冷える、疲れやすいなどの症状がある人に用いられます。
五積散(ごしゃくさん)の効能
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適応される症状
- 関節痛
- 神経痛
- 腰痛
- 更年期障害
配合生薬
配合生薬の効能
茯苓(ぶくりょう)
茯苓には、利尿、強心、鎮痛、鎮静作用があります。漢方処方では利尿剤、利水剤、心悸亢進、胃内停水、浮腫、筋肉の痙攣などに茯苓を配合しています。
秩苓とは漢名で、植物名をマツホドと呼び、松の根に寄生するサルノコシカケ科の菌核です。秩苓は菌核に多糖類のβパヒマンを、それにテルペノイドやエルゴステロールなどの成分を含んでいます。
最近の報告では多糖類のパヒマンから誘導されたパヒマランに、細胞性免疫賦活作用が認められています。サルノコシカケ科に共通の抗腫瘍作用とともに、今後の研究が期待されています。
茯苓は民間薬としては使われず、まれに利尿を目的に煎液を飲む程度です。漢方でも配合薬としては汎用されますが、単独では用いません。
蒼朮(そうじゅつ)
朮は体内の水分代謝を正常に保つ作用があり、健胃利尿剤として利用されています。特に胃弱体質の人の下痢によく効き、胃アトニーや慢性胃腸病で、腹が張るとか、冷えによる腹痛を起こした場合などにもいいです。
日本では調製法の違いによって白朮(びやくじゅつ)と蒼朮(そうじゅつ)に分けられます。いずれも同じような効能を示しますが、蒼朮は胃に力のある人の胃腸薬として使い分けられています。
両者の主成分は、精油成分のアトラクチロンと、アトラクチロジンです。ちなみに、白朮には止汗作用があるのに対して、蒼朮は発汗作用を示します。朮は漢方治療では、多くの処方に広く利用される生薬の一つです。
陳皮(ちんぴ)
陳皮はミカンの皮を、天日乾燥させた物です。リモネン、テルピネオールといった芳香性のある精油成分を豊富に含んでいるため、胃液分泌促進作用、胃運動亢進作用や抗炎症、抗アレルギー作用があります。漢方では、芳香性健胃薬や駆風(腸管にたまったガスを排出)、食欲増進、吐き気止めなどを目標に処方されます。
また、精油成分には一般に発汗作用があり、初期の風邪などに効果があります。入浴剤として利用すると血行をよくし、肌を滑らかにします。
半夏(はんげ)
半夏には水分の停滞や代謝障害の改善作用や、鎮吐効果(吐き気止め)があります。特に胸腹部に突き上げるような膨満感があり、お腹がゴロゴロなる場合やのどの痛みがある場合に用います。
しかし、えぐみが強く、飲みにくくてかえって吐き気を催すこともあるので、単独で利用されることはまれで、漢方では吐き気をともなう胃腸障害や、つわりの適用処方などに広く配合される重要生薬の一つです。
鎮吐作用は、有効成分のアラビナンを主体とする多糖体成分によると考えられています。
当帰(とうき)
婦人病の妙薬として、漢方でひんぱんに処方される重要生薬の一つです。漢方では古来、駆お血(血流停滞の改善)、強壮、鎮痛、鎮静薬として、貧血、腰痛、身体疼痛、生理痛生理不順、その他更年期障害に適用されています。
茎葉の乾燥品は、ひびやしもやけ、肌荒れなどに薬湯料として利用されています。鎮静作用はリグスチライド、ブチリデンフタライド、セダン酸ラクトン、サフロールなどの精油成分によります。また有効成分アセチレン系のファルカリンジオールに鎮痛作用があります。
駆お血効果を裏付ける成分として、血液凝固阻害作用を示すアデノシンが豊富に含まれています。また、アラビノガラクタンなどの多糖体に免疫活性作用や抗腫瘍作用が認められ、抗ガン剤としての期待も、もたれています。
乾姜(かんきょう)
乾姜は優れた殺菌作用と健胃効果、血液循環の改善効果、発汗と解熱効果があります。漢方では芳香性健胃、矯味矯臭、食欲増進剤の他、解熱鎮痛薬、風邪薬、鎮吐薬として利用されています。
辛味成分のショウガオールやジンゲロールなどに解熱鎮痛作用、中枢神経系を介する胃運動抑制作用、腸蠕動運動充進作用などが有ります。そう他、炎症や痛みの原因物資プロスタグランジンの生合成阻害作用などが認められています。
芍薬(しゃくやく)
芍薬は漢方処方で最もよく配合される生薬の一つで、主として筋肉の硬直、腹痛、腹部膨満感、頭痛、血滞などに広く処方されています。
主成分のモノテルペン配糖体ペオニフロリンには鎮痛、鎮静作用の他、末梢血管拡張、血流増加促進作用、抗アレルギー、ストレス性潰瘍の抑制、記憶学習障害改善、血小板凝集抑制などの作用が有ります。その他、非糖体ペオニフロリゲノンには筋弛緩作用が認められています。
川きゅう(せんきゅう)
川きゅうには補血、強壮、鎮痛、鎮静があります。漢方では貧血、冷え性、生理痛生理不順など婦人科の各種疾患に利用されています。
有効成分のリグスチライドなどのフタライド類に筋弛緩作用や血小板凝集阻害作用が有ります。またクニジリットには、免疫活性作用が認められています。
古い医学書には性病による各種皮膚疾患、化膿性のできもの、疥癬(かいせん)などを治すと記載されています。
白し(びゃくし)
白しには、鎮静、鎮痛、排膿、通経、止血、抗菌作用などがあります。漢方では、解熱鎮痛、解毒、俳膿などを目標に処方されます。
主成分は、フロクマリン類のインペラトリンやフェロプテリン、ビャクアンゲリシンなどがあります。
白しエキスには、血圧上昇や中枢興奮作用などがあり、フロクマリン類には脂肪分解促進作用や脂肪生成阻害作用、発がん抑制作用などがあります。
枳殻(きこく)
ダイダイの果皮を橙皮といって、健胃薬、風邪薬として利用されます。有効成分は精油成分のリモネンです。リモネンには中枢抑制、末梢血管収縮、胆汁分泌促進、血清コレステロール低下作用などが知られています。
未熟果実を枳実といって、やはり健胃薬とする他、下痢止め、去痰、排膿薬として利用されます。効能は橙皮と同様、主として精油成分による他、フラボノイドのヘスペリジン、アルカロイドのシネフリンなどに由来します。枳実の水性エキスは動物実験で、胃腸運動の充進・抗炎症・抗アレルキー作用を示すことが明らかにされています。
枳実より採集時期が1~2ヵ月遅く、やや大型のものを枳殻といいます。
桔梗(ききょう)
桔梗には、去痰、鎮痛、鎮静、解熱、抗炎症、抗腫瘍、抗潰瘍作用など多くの効果があります。これらの効果は有効成分サポニンのプラチコジンによるもので、動物実験で証明されています。
その他、有効成分のイヌリンはマクロファージ(免疫細胞)を活性化し、動物実験で抗がん作用が認められています。
漢方では、去痰や消炎、俳膿、鎮咳などに処方されています。民間療法として、葉の生汁を漆かぶれに塗るとよいといわれています。
桂皮(けいひ)
桂皮には、発汗作用 健胃作用 のぼせを治す作用 鎮痛作用 解熱作用があります。漢方では、頭痛、発熱、悪風、体痛、逆上などを目的に使います。
主成分は、カツラアルデヒドを含む精油です。
風邪をひいて胃腸や体が丈夫でない人は葛根湯(かっこんとう)でなく、桂皮を配合した桂枝湯(けいしとう)を服用すると良いでしょう。
民間療法として桂皮は健胃、整腸に用いられ、桂皮を煎じて食前に飲みます。また桂皮の葉を陰干しにし布袋に詰めて風呂に入れると、精油の作用で体をあたためる効果があります。
麻黄(まおう)
麻黄は発汗、解熱、鎮咳、鎮痛作用があり、喘息や呼吸困難、悪寒、関節痛に有効で、漢方では、風邪の初期に頻用される葛根湯(かっこんとう)などに配合されます。
主成分のエフェドリンは気管支筋弛緩作用を有する他、アドレナリンに似た交感神経興奮作用を示し、散瞳、発汗、血圧上昇効果などをあらわします。
また、麻黄エキスおよびエフェドリンは体温を上昇させ、発汗を促して熱を放出させることにより解熱効果をあらわす他、抗炎症作用も認められています。
また、多糖体であるエフェドランA-Eを含有し、血糖降下作用を示します。また麻黄の根には、地上部と逆に血圧降下作用を示す他、止汗作用があります。
甘草(かんぞう)
甘草は漢方治療で緩和、解毒を目的として、いろいろな症状に応用されますが、主として去痰、鎮咳、鎮痛、鎮痙、消炎などです。
有効成分のグリチルリチンには、痰を薄めて排除する作用があり、体内で分解するとグリチルレチン酸となって咳を止めます。
その他、グリチルリチンには多種多様の薬理効果が有り、消炎、抗潰瘍、抗アレルギー作用の他、免疫活性や、肝細胞膜の安定化、肝保護作用、肝障害抑制作用などが明らかにされています。
有効成分イソリクイリチンおよびイソリクイリチゲニンは糖尿病合併症の眼病治療薬として、また胃酸分泌抑制作用もあり胃潰瘍の治療薬として期待されています。
甘草はあまり長期服用しますと、低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、体重増加などの副作用が現れることがあるので、注意を要します。
大棗(たいそう)
大棗は滋養強壮、健胃消化、鎮痛鎮痙、精神神経用薬として、多くの漢方処方に配合されています。
含有サポニンのジジフスサポニンによる抗ストレス作用があり、アルカロイド成分リシカミンのおよびノルヌシフェリンなどによる睡眠延長作用、多糖体ジジフスアラビナンによる免疫活性などが報告されています。
その他、サイクリックAMP(環状アデノシン一リン酸)があります、サイクリックAMPは脂肪組織を構成する中性脂肪の分解を促します。また、含有成分フルクトピラノサイドには抗アレルギー作用が認められています。
厚朴(こうぼく)
厚朴には、抗菌作用、鎮痙作用、健胃作用などがあります。漢方として収斂(組織を引き締め作用)、利尿、去痰の目的に胸腹部膨満感、腹痛、咳などに使用されています。
厚朴にはアルカロイドのマグノクラリン、精油のマキロール、ホオノキオール、マグノロールなどが含まれています。
厚朴のマグノロールには大腸菌、黄色ブドウ球菌などの増殖を抑える働きが報告されています。またマグノロールとホオノキオールには中枢性筋弛緩作用が認められています。
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