-八味地黄丸(はちみじおうがん)-


八味地黄丸(はちみじおうがん)の効能

八味地黄丸は、老人病の代表的な漢方薬です。体力中等度以下で、頻尿や夜間に多尿になる排尿異常、腰痛、脚力が弱体、疲労倦怠、精力減退、高血圧、口渇などがあるが、食欲があって胃腸が悪くない人に用います。前立腺肥大、ED(勃起障害)、腰痛、動脈硬化、高血圧、低血圧、頻尿、更年期障害、慢性腎炎、糖尿病、浮腫など広く応用します。倦怠感、冷え、しびれ感、かすみ目、かゆみ、頻尿、むくみなどの症状がある人に用いられます。


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八味地黄丸(はちみじおうがん)の解説

八味地黄丸によるアンチエイジング効果

八味地黄丸は高齢者に最も多く処方される漢方薬で、「高齢者の聖薬」とか「老化予防の名薬」とも呼ばれています。事実、頻尿、精力減退、更年期障害、老人性皮膚掻痒(そうよう)症、前立腺肥大、尿失禁、老人性痴呆、難聴、健忘症など、およそ加齢と老化にまつわるあらゆる病気や症状に適応する処方です。

漢方では、体の若さは「腎」の働きに起因すると考えています。腎が十分に機能していればいつまでも若々しく、機能しなくなると老化すると考えられています。すなわち生命力は腎によって維持されていると考えているのです。漢方の「腎」は現代医学でいう腎臓そのものではなく、泌尿系、生殖器系、内分泌系、中枢神経系を含みます。

そして、これら腎全体の機能不足を漢方では、「腎虚」(じんきょ)といいますが、八味地黄丸は弱った腎を強力に補う薬として昔から用いられてきました。別名「八味腎気丸」(はちみじんきがん)とも呼ばれています。八味地黄丸は根本的に若さを取り戻す処方ですから、自信を取り戻す効果もあるといえるでしょう。

しかし八味地黄丸だけに頼らないで下さい。八味地黄丸で腎の補強をしても、日常的に足腰を使わなければ老化は進んでしまいます。なぜなら生殖と成長と老化に関わっている腎は、きちんと働くために食物から摂取する栄養が必要ですし、栄養を腎に定着させるには運動が欠かせないからです。運動の基本は歩くことですから、歩く人は腎が丈夫です。

八味地黄丸の地黄(じおう)の効果

八味地黄丸は8種の生薬で作られる丸剤です。8種の生薬の中で最も重要なのは地黄(じおう)です。地黄については「熟地黄」(じゆくじおう)を用いることになっています。熟地黄は地黄を酒で蒸して、天日で乾かすという作業を9回繰り返しますが、この回数が少ないと胃もたれを起こしやすくなります。

八味地黄丸の副作用で「胃もたれを起こしやしやすいので、胃腸の弱い人は飲まないでください」と書いてありますが、これは乾地黄、つまり酒と天日で処理する以前の、胃腸に強い刺激を与える成分がある地黄を用いた場合です。昔の製法どおり熟地黄を使った八味地黄丸なら、ちょっと胃腸の調子が悪いという程度の人が飲んでも副作用はありません。この熟地黄には、血液増加作用、強壮作用があり、足腰の疼痛や月経不順、耳鳴り、めまい、白髪などに効果があります。

他の7つの生薬は、お血、すなわち体内の血の滞りを取り去る牡丹皮(ぼたんぴ)、気の流れをよくしてのぼせを解消し発汗作用のある桂皮(けいひ)、体内の水分の流れをよくし精神を安定させる茯苓(ぶくりょう)、同じく水分代謝をよくし下痢や嘔吐を抑える沢瀉(たくしゃ)、腰やひざの痛みをとり、体を温める山茱萸(さんしゅゆ)、精気を滋養する山薬(さんやく)、冷えを取り去り体に陽を補う附子(ぶし)です。配合比率は熟地黄5g、牡丹皮3g、桂枝1g、附子1g、その他各3gとなっています。

八味地黄丸の附子(ぶし)の効果

八味地黄丸の8種の生薬の中で、地黄と並んでもう1つキーポイントとなるのが附子です。附子は、アルカロイドの一種であるアコニチンという猛毒を含んだ生薬です。食べると下痢や嘔吐を催し、呼吸困難から死に至ることもあります。アイヌの人々は矢尻にこの毒を塗って狩猟を行っていました。

この毒性の高い附子には、強心作用や鎮痛作用があり、瀕死のネズミに与えると元気を取り戻し、元気なネズミに与えると死に至らしめるという正反対の効果があることが、動物実験で明らかになっています。漢方では、この附子の毒性をいかに取り除いて、薬効を引き出すかが長い間研究されてきましたが、1960年代に日本で考案された「加工附子」が主流となりました。

これは附子をオートクレーブという装置で加熱、加工調製したものです。これによって附子の有毒成分はほぼ150分の1以下になっています。しかし、加工附子では八味地黄丸本来の効果が期待できないことから、その後いくつかの漢方薬メーカーは炮附子(ほうぶし)を使うようになりました。

炮附子は苦汁(にがり)に附子をつけ込んだ後、加熱処理したものです。炮附子もアコニチンはほとんど検出されませんが、炮附子によって八味地黄丸本来の効果が期待できるようになりました。

八味地黄丸の品質

八味地黄丸もおいしいものほど品質がいいといえます。漢方薬には煎じて飲む煎剤(せんざい)、生薬を粉末にして水と一緒に飲む散剤(さんざい)、そして賦形剤(ふけいざい)で固めた丸剤(がんざい)の3種類があります。

八味地黄丸はその丸剤で賦形剤(ふけいざい)として蜂蜜を使います。したがって、噛むと口の中でガムのようにつぶれる程度の固さが普通です。噛むとカリッとして歯が痛むような八味地黄丸は、賦形剤が蜂蜜ではないから固いのです。こういう八味地黄丸は本来の製法とはいえません。口の中でクシャッととろける八味地黄丸からは、ほのかに蜂蜜の香りが漂います。その後で8種の生薬の香りが口の中に広がります。

現代医学的にいえば、腎は腎臓、副腎、脳下垂体などに匹敵する機能を持っています。体の水分の新陳代謝をつかさどり、性ホルモンをはじめ各種のホルモンの分泌をコントロールしています。そして腎機能は年を取るにしたがって弱ります。八味地黄丸はこうした腎の弱体化、つまり腎虚を改善する漢方薬で、飲んでいるうちに弱った足腰が強化され、衰えていた目や耳などが改善し精力が回復します。

八味地黄丸による老人性白内障の治療効果

八味地黄丸による老人性白内障の治療は、高い成果をあげています。八味地黄丸が老人性白内障の改善に役立つという研究は、漢方医の故藤平健先生が行っていて、昭和63年に386人の老人性白内障の患者を対象にして、漢方治療によって視力の向上した例が42.7%、現状維持が26.2%、効果なしが31.1%という調査結果を得ています。

適応される主な症状

配合生薬

配合生薬の効能

地黄(じおう)

地黄は漢方治療で、糖尿病に用いられる処方の一つ八味地黄丸(はちみじおうがん)の主構成生薬です。地黄にはその調製法により鮮地黄(せんじおう)、乾地黄(かんじおう)、熟地黄(じゅくじおう)があります。

乾地黄には熱を冷ます作用と血糖降下作用がありますが、虚弱体質の方には不向きです。乾地黄の血糖降下作用はイリドイド配糖体のレーマンノサイド類によるものです、その他、乾地黄エキスには血圧を下げる作用が認められています。

鮮地黄には止血や通経作用があり、熟地黄エキスには血液増加作用や強壮効果があります。

茯苓(ぶくりょう)

茯苓には、利尿、強心、鎮痛、鎮静作用があります。漢方処方では利尿剤、利水剤、心悸亢進、胃内停水、浮腫、筋肉の痙攣などに茯苓を配合しています。

秩苓とは漢名で、植物名をマツホドと呼び、松の根に寄生するサルノコシカケ科の菌核です。秩苓は菌核に多糖類のβパヒマンを、それにテルペノイドやエルゴステロールなどの成分を含んでいます。

最近の報告では多糖類のパヒマンから誘導されたパヒマランに、細胞性免疫賦活作用が認められています。サルノコシカケ科に共通の抗腫瘍作用とともに、今後の研究が期待されています。

茯苓は民間薬としては使われず、まれに利尿を目的に煎液を飲む程度です。漢方でも配合薬としては汎用されますが、単独では用いません。

山茱萸(さんしゅゆ)

山茱萸は補腎、強壮、疲労回復薬として、脾胃を温め、寒、温による疼痛、知覚麻痺、冷えなどの症状を除き、腰や膝を温め、尿利をよくし、老人の頻尿を抑え、耳なり、頭痛を治す。

これらの裏付けとして、タンニン類(テリマグランジンⅠⅡなど)の抗酸化作用による脂質過酸化抑制、脂肪分解阻害作用、スーパーオキシドラジカル除去作用が確認されている他、抗腫瘍、抗ウイルス作用も報告されています。

また、山茱萸エキスに血糖降下作用、抗アレルギー作用、免疫活性作用、肝機能障害の改善作用などが報告されています。

牡丹皮(ぼたんぴ)

牡丹皮は鎮静、鎮痛、消炎作用があり、漢方で血行不順に関係する婦人病薬として、芍薬とならんで多用されますが、単独で用いられることなく、駆お血(血の流れの改善)処方に配合されます。

主成分は、フェノール類のペオノールやモノテルペノイド配糖体のペオニフロリンなどで、いずれも鎮痛、鎮静作用が認められています。ペオニフロリンにはまた、大腸薗、ブドウ状球薗、連鎖状球菌などに対して増殖抑制作用があります。その他タンニンを多く含みます。

牡丹皮は体質的には体力があり、便秘がちな人に適用されます。

山薬(さんやく)

山薬は補剤として応用範囲が広く、特に脾臓や胃の虚弱を補い、食欲不振や疲労に滋養強壮、強精薬として、用いられます。でんぷんや消化酵素も多く含まれ、とろろ汁として食用しても効果があり、慢性の下痢にも良いので、まさに医食同源を代表する生薬の一です。

水性エキスに男性ホルモン増強作用が認められ、ステロイドサポニンが関与していると推測されています。

漢方では糖尿病治療薬として処方される八味地黄丸(はちみじおうがん)などに配合されていますが、山薬に含まれる多糖類や糖タンパクが有効成分と思われ、動物実験でも血糖降下作用が報告されています。

沢瀉(たくしゃ)

沢瀉には尿毒症の改善、肝脂肪の蓄積抑制、利尿作用などが認められています。

これらにはトリテルペンのアリソールB、およびそれらのモノアセタートが関与しています。また、これらは血中のコレステロール低下作用を示すことが動物実験で確認されています。また免疫活性作用は含有多糖類による効果です。

漢方では利尿薬や尿路疾患用薬、鎮暈薬(ちんうんやく:乗物酔い防止薬)などに処方されます。

桂皮(けいひ)

桂皮には、発汗作用 健胃作用 のぼせを治す作用 鎮痛作用 解熱作用があります。漢方では、頭痛、発熱、悪風、体痛、逆上などを目的に使います。

主成分は、カツラアルデヒドを含む精油です。

風邪をひいて胃腸や体が丈夫でない人は葛根湯(かっこんとう)でなく、桂皮を配合した桂枝湯(けいしとう)を服用すると良いでしょう。

民間療法として桂皮は健胃、整腸に用いられ、桂皮を煎じて食前に飲みます。また桂皮の葉を陰干しにし布袋に詰めて風呂に入れると、精油の作用で体をあたためる効果があります。

附子(ぶし)

中医学では寒を去り、痛みを止める薬として悪寒や、四肢の関節痛を治す目的に使用されます。附子は新陳代謝機能を促進し(特に水分の代謝を促進)、強心、利尿、鎮痛薬となります。

主成分であるアコニチンは猛毒物質で、心拍数亢進、不整脈を起こし心停止になることが知られています。猛毒のため、塩附子、炮附子、加工附子などに加工調製を施して生薬にします。

アコニチン系アルカロイド、メスアコニチンは、中枢性の鎮痛作用や血管拡張作用(平滑筋弛緩作用)、ならびに免疫抑制または増強作用を示します。強心作用物質としてハイゲナミンが確認されています。

アコニチン系アルカロイドには、抗炎症作用や肝臓での、タンパク質生合促進作用も報告されています。また、血糖降下作用を示す成分として、アコニタンA-Cがあります。

附子エキスにはその他、抗ストレス潰瘍、腎機能改善作用などが認められている。有毒植物なので、素人の使用は危険です。


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漢方薬の使用上の注意

漢方薬の副作用


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